白内障と白内障手術
白内障とは
白内障は、主として加齢によって水晶体が濁り、視力が低下する病気です。早い場合は40代から発症し、80才を過ぎるとほとんどの人に白内障の症状が見られるようになります。
軽度の白内障の場合は、ほぼ自覚症状がありませんが、「目がかすむ」「ものが二重に見える」「まぶしさを感じる」等、日常生活に支障をきたす場合は、外科手術で白内障を治療する必要があります。
白内障は時間とともに水晶体の白濁が増していく進行性の病気であるため、手術を行わない場合、最終的には失明にいたります。
白内障手術とは
白内障手術では、濁った水晶体を超音波で吸引し、人工の眼内レンズを埋め込みます。手術時間は15~30分程度で、原則として日帰りが可能。手術後は数日ほど眼帯を装着して眼を保護します。
白内障手術で使用する眼内レンズは、手術後にどのあたりを一番見やすくするか(手元や遠くなど)を医師と相談し、様々な度数のレンズの中から最適なものを選びます。
また、度数以外にも機能や形状によって複数の種類の眼内レンズが開発されています。
- 単焦点眼内レンズ
- 焦点が一つ。一般的な白内障手術で使用される
- 多焦点眼内レンズ
- 焦点が複数。遠距離も近距離も見える
- 着色眼内レンズ
- 紫外線や単波長可視光線をカット。光の透過性が水晶体に近い
- 非球面眼内レンズ
- ハロ・グレアを軽減し、夜間の見え方を向上する
- トーリック眼内レンズ
- 乱視を軽減する
白内障手術のリスク、手術後の注意点
白内障手術は安全性が高い手術の一つですが、外科手術である以上100%安全ではなく、まれに合併症が発生します。もっとも失明の頻度が高く、恐ろしいのが「眼内炎」。発症した場合は、すみやかな処置が必要となるため、これを警戒して入院による白内障手術を実施している眼科もあります。
また、時間の経過とともに後嚢(水晶体の後部にある膜)が曇る「後発白内障」は、白内障手術の合併症の中でも比較的発生頻度が高く、医療機関での再手術が必要になります。
白内障手術を受ける際は、手術実績のある眼科を選ぶことがなによりも大切です。事前に眼科専門医の有無を調べたり、リスクの説明や患者の質問に充分時間を割いてくれる「インフォームドコンセント」を徹底しているかどうかも、良い眼科を選ぶためのチェックポイントです。
おもな白内障手術の合併症
- 眼内炎
- 眼内に細菌が入り増殖する。早急に処置をしないと失明にいたる。術後の眼の管理が重要
- 後嚢破損(水晶体落下)
- 水晶体の後部にある膜が破れ、除去すべき水晶体核や皮質の一部が落下。再手術
- 駆逐性出血
- 手術中、眼底部分で動脈性の出血が生じる。程度により失明も。発現頻度はごくわずか
- 後発白内障
- 水晶体の後部にある膜(後嚢)が時間とともに濁ってくる。ヤグレーザーを使用して回復可能
白内障手術の種類と費用
白内障手術の種類
白内障手術で使われる眼内レンズには、大きく分けて「単焦点」と「多焦点」があります。
- 単焦点眼内レンズ
- 一箇所にのみピントが合う。手元や遠方を見るときは老眼鏡が必要。公的保険(健康保険、国民健康保険など)の適用となる。一般的な白内障手術
- 多焦点眼内レンズ
- 遠くと近くの両方にピントが合う。公的保険の適用対象外(自費診療)だが、先進医療認定の医療施設であれば混合診療として一部公的保険の適用が可能。単焦点の白内障手術と区別して「遠近両方白内障手術」と呼ばれる。
白内障手術の費用
単焦点眼内レンズと多焦点眼内レンズは、費用面でも異なります。多焦点眼内レンズの手術費用は、単焦点眼内レンズのおよそ10~20倍。ただし、術後に老眼鏡をわずらわしく感じる等で、多焦点眼内レンズを選択する人も増えています。
- 単焦点眼内レンズ
- 3割負担で約5万円前後
- 多焦点眼内レンズ
- 自費診療のため眼科により異なる。両眼50万円台~120万円台
白内障手術を受ける際は、「老眼鏡をかけたくない」「車を運転したい」といった生活上の利便性や、手術にかかる費用などを総合して、単焦点レンズ・多焦点レンズの選択を行うと良いでしょう。
多焦点眼内レンズの利点と欠点
多焦点眼内レンズの利点
多焦点眼内レンズの最大の利点は、遠くと近くの両方に焦点が合うため、手術後に老眼鏡の必要性が減る点です。
また、先進医療の認定医療機関で手術を受けると診療の一部に公的保険を適用されるのもメリットの一つ。さらに、加入中の生命保険や医療保険に「先進医療特約」が付加されている場合、保険会社によっては、先進医療部分の費用を保険でカバーできる可能性があります。
多焦点眼内レンズの利点
- 老眼鏡の必要性が減る(効果には個人差がある)
- 先進医療が適用されており、認定医療機関では手術料金の一部に健康保険が適用される(民間の医療保険に「先進医療特約」が付帯されている場合、保険会社によっては保障対象となる)
※多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術の項を参照
多焦点眼内レンズの欠点
一方、多焦点眼内レンズの欠点としては、費用の高さのほかに、術後の夜間視力がやや劣る点が挙げられます。多焦点眼内レンズは、車のヘッドライトやネオンサインなどがにじんで見えるハロやグレアが、単焦点眼内レンズの場合と比較して起こりやすく、夜間に車を運転することが多い人には向きません。
多焦点眼内レンズの欠点
- 単焦点眼内レンズを用いた白内障手術と比較して手術費用が高い
- 瞳孔の大きさ・乱視の有無によってハロ・グレア等が起きる場合がある(夜間に車のヘッドライトやネオンサインなどがにじんで見づらくなる現象)→ハロ・グレアが起こりにくい眼内レンズも開発され、国外では認可されているが日本国内では認可されていない
なお、レーシックなどの視力回復手術を専門で行う眼科は、眼科専門医の数が多く、白内障手術の実績がある医師も在籍しているのが一般的。多焦点眼内レンズを使った白内障手術に興味がある場合は相談してみると良いでしょう。
≪ 多焦点眼内レンズを使用した「遠近両用白内障手術」を実施している眼科 ≫
新宿と大阪に拠点を持つレーシック眼科。多焦点眼内レンズのほか、保険診療となる単焦点眼内レンズを使った白内障手術も取り扱う。なお、多焦点眼内レンズの場合はレーシックによる追加矯正が1年間無料。
遠近両用白内障手術(多焦点眼内レンズ) |
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両眼62~78万円(税抜) |
白内障手術(単焦点眼内レンズ) |
3割負担の場合で約6万円(別途診察代) |
東京・大阪・名古屋・札幌・神戸・福岡に拠点を持つ国内最大規模のレーシック眼科。眼科専門医が常駐し、全手術を担当。遠近両用白内障手術は厚生労働省認可の多焦点眼内レンズを使用している。手術後はレーシックによる追加矯正が3年間無料。
遠近両用白内障手術(多焦点眼内レンズ) |
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両眼78~98万円(税込) |
レーシックで115万件以上の実績を誇る大手レーシック眼科。手術はすべて眼科専門医が対応する。先進医療が適用されない遠近両用白内障手術の中ではトップクラスの安さを誇る。手術後はレーシックによる追加矯正が3年間無料。
遠近両用白内障手術(多焦点眼内レンズ) |
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両眼50.6万円~(税抜) |
白内障は、加齢とともにほぼすべての人に発症する目の症状です。早期に発見するためには、信頼できる眼科をかかりつけ医に持ち、症状を自覚したら早目に相談することが欠かせません。
老後の生活の質を維持するために、白内障手術は有効な選択肢の一つ。白内障手術の持つリスクや費用などを充分吟味したうえで、手術を検討してみてはいかがでしょうか。