子供のオルソケラトロジーを考える ‐安全性はどう?リスクは?‐

近年、子供の視力低下が問題になっています。2017年に文部科学省が発表した平成28年度の学校保健統計調査では、6才の20%、12才の50%が視力1.0未満であることがわかりました。

子供

視力が悪化すれば、必然的に眼鏡やコンタクトを着けなければいけませんが、「見た目が格好悪い」「外遊びやスポーツのとき邪魔になる」等、眼鏡をつけることを嫌がる子供は少なくありません。保護者の方の中にも、他に視力を回復させる方法があるなら、できれば子供には眼鏡をかけさせたくない、という思いの方もいらっしゃることでしょう。

そのような親子のニーズに応えるかたちで、近年、注目を集めているのが「オルソケラトロジー」です。夜の就寝時に特殊なコンタクトレンズを着用することで、昼間は裸眼で過ごせるようになる視力回復方法ですが、子供に使用した場合の安全性、リスクの有無などは気になるところ。

ここでは、オルソケラトロジーの仕組みや条件から、子供がオルソケラトロジーを利用する安全性、リスク、おすすめの眼科をご紹介します。

オルソケラトロジーの仕組み

オルソケラトロジーは、特殊なコンタクトレンズを装着し、視力を一時的に回復する視力回復方法です
アメリカで1940年代から研究、開発が始まり、日本では2009年に厚生労働省が医療機器として、オルソケラトロジーで使われるコンタクトレンズの使用を認可しました。

オルソケラトロジーの視力回復の仕組み・画像

オルソケラトロジーでは、夜の就寝時に専用のコンタクトレンズを装用します。寝ている間に角膜にクセをつけることで、近視の原因である焦点距離を調節し、一時的に視力を回復。角膜は柔らかいうえ新陳代謝が活発なため形状を変えやすく、一度変わった形状を一定の時間保つことができるため、痛みなく視力を回復することができます

オルソケラトロジーで使うコンタクトレンズは一般で使われているものとは違い、酸素が眼に行きわたるように角膜矯正用の「高酸素透過性コンタクトレンズ」を使用。また、通常のコンタクトレンズは装用したまま就寝した場合、ドライアイになる可能性がありますが、オルソケラトロジーのコンタクトレンズには、ドライアイ防止の涙が溜まるくぼみもデザインされており、安心して使うことができます。

オルソケラトロジーを利用する上での条件

以下は、オルソケラトロジーを利用する際の条件です。
場合によっては、条件に当てはまらない人もオルソケラトロジーを利用することができるため、まずは医師に相談しましょう。

極度な近視・乱視ではないこと

近視度数-1.00D~-4.00D以下、乱視度数-1.50D以下

眼に異常がないこと

角膜の異常(円錐角膜、角膜上皮びらんなど)・重度のドライアイ・重度のアレルギー症状など

利用者がコンタクトレンズを清潔に保つことができること

コンタクトレンズの洗浄や交換を適宜行わなかった場合、角膜炎などの感染症になる場合があります

未成年の場合は、保護者の許可を得ていること

日本コンタクトレンズ学会が制定した「オルソケラトロジー・ガイドライン」では、オルソケラトロジーの利用は20歳以上と定められていますが、それは医学的な理由からではなく、利用者の判断力、親権者の関与といった面から、20歳以上が望ましいという理由によります。
眼科によっては年齢制限を設けず、コンタクトレンズの装用が可能かどうかという線引きでオルソケラトロジーの利用を許可しているため、小学校低学年~中学年の子供でも利用可能な場合も
しかし、子供だけではコンタクトレンズを適切に扱えない可能性があるため、保護者のサポートが必要です。清潔に保つための指導をしっかりと行い、また子供にも必ずレンズの取り扱いに関するルールを守ってもらうようにしましょう。

子供とオルソケラトロジー

子供

子供がオルソケラトロジーを利用するうえで、最も気になるのはその安全性やリスク。
オルソケラトロジーは、日本ではまだ一般的ではありませんが、アジア諸外国においては、子供の利用率が高い視力回復方法です。また、子供がオルソケラトロジーを利用することによって近視抑制効果があることも様々な論文で報告されています*。年齢が若ければ若いほど視力回復効果は高いというデータもあり、現在日本コンタクトレンズ協会は、ガイドラインに記載してある適応年齢を20歳から引き下げることを検討しています。

*参考:Influence of Overnight Orthokeratology on Axial Elongation in Childhood Mytopia

コンタクトレンズの装用をやめれば、いつでも角膜を元に戻すことができるという面からも、安全性があり、子供がオルソケラトロジーを利用するメリットはあると考えられるでしょう。

オルソケラトロジーのメリット

眼に異常を感じた場合、すぐに使用を止めることができる
オルソケラトロジーはコンタクトレンズの装用により視力を回復しているため、万が一眼に異常を感じた場合は、装用をやめるだけで角膜を元の状態に戻すことができます
昼間は裸眼で過ごせる
眼鏡や一般のコンタクトレンズと違い、昼間は裸眼で過ごすことができるため、破損や紛失を心配する必要はありません。また、コンタクトレンズの装用は就寝時のため、ホコリ等が入ってしまう心配も不要です。
装用テストで眼への適応状態や実際に利用を続けられそうか、効果はあるか等を確認できる
どの眼科でも、コンタクトレンズの注文前に装用テストを受けることができます。その際、つけたときに違和感はないか、洗浄はきちんとできそうか、効果はきちんと出ているか等確認することができます。万が一問題があった場合には、すぐに医師へ相談しましょう。

一方、子供がオルソケラトロジーを利用する際、リスクも何点かあります。
主に感染症、不正乱視の可能性が挙げられますが、コンタクトレンズを清潔に保ち、眼を強くこすらなければ可能性は低くなります。そのためにも、保護者の方はしっかりと子供がルールを守れているか、チェックしましょう。

オルソケラトロジーのデメリット

角膜への負担、感染症・不正乱視の可能性
角膜は常に酸素を必要としていますが、就寝時コンタクトレンズを装用すると角膜は低酸素状態になり、裸眼の状態よりも負担が大きくなります。
また、コンタクトレンズが清潔に保たれなかった場合、低酸素状態で繁殖しやすい緑膿菌、アカントアメーバという菌が繁殖し、感染症になる可能性も。寝ている間に目をこすったり、寝方によってコンタクトレンズがずれてしまい、不正乱視になってしまうこともあります。
角膜の形状によってはオルソケラトロジーレンズが合わないことも
特に装用を開始した初期は、夜間にハロ(光の周りがぼやける現象)や、グレア(光が強くギラギラして見える現象)の症状が出ることがあります。
また、装用初期は視力が安定しないことも多く、効果がしっかりと出るまで時間がかかる場合も。
保険適用外のため、治療費が高い
オルソケラトロジーには健康保険が適用されないため、治療費の負担が大きくなります。初期費用は、装用テスト代とレンズ代で約20万円前後。
定期検査費用は初回3ヶ月分程度が初期費用に含まれていますが、それ以降は3ヶ月毎に3,000円前後がかかります。また、レンズには耐用年数があり、2年毎に交換する必要があります。
すべて合わせた場合、最初の2年間は約30万前後、3年目以降は定期検査とレンズ交換の費用を合わせ、約13万前後かかる計算に。
しかし、オルソケラトロジーの費用は医療費控除の対象となっているため、確定申告をすることで所得税の還付を受けることができます。治療費の負担を軽くするため、忘れずに申告しましょう。

おすすめのオルソケラトロジー眼科

ここでは、オルソケラトロジーを実施しているおすすめの眼科を紹介します。

≪ オルソケラトロジー実施眼科 ≫

神戸神奈川アイクリニック

神戸神奈川アイクリニック・画像

料金
  • 両眼18万円(税込)
  • トライアルレンズ(1週間貸出)
    ...保証金7万円(税込)
  • 交換レンズ代
    ...両眼7万(税込)
対象年齢
10才~
保障期間
3か月
定期検診
1週間後、1か月後、以降3か月に1度必ず来診
検診費用
装用開始から3か月以内:無料
4か月目以降:1回1,000円

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南青山アイクリニック東京

南青山アイクリニック東京・画像

料金
  • 両眼19万円(税込)
  • トライアルレンズ(1週間貸出)
    ...3,000円(税込)
  • 交換レンズ代
    ...両眼14万円
対象年齢
年齢制限なし
※装用可能かどうかで判断
保障期間
1年
定期検診
1か月後、3か月後、以降3か月に1度必ず来診
検診費用
1,300円~3,100円(税込)

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新宿近視クリニック

新宿近視クリニック・画像

料金
  • コンフォートレンズ
    ...両眼:15.8万円(税込)
    ...片眼:7.9万円(税込)
  • プレミアムレンズ
    ...両眼:18.8万円(税込)
    ...片眼:9.4万円(税込)
  • 装用テストレンズ(カウンセリング、適応検査代含む)
    ...5,400円
  • 交換レンズ代
    ...両眼5.4万円
対象年齢
年齢制限なし
※装用可能かどうかで判断
保障期間
なし
定期検診
翌日、1週間後、2週間後、1か月後、3か月後、以降3か月に1度必ず来診
検診費用
装用開始から3か月以内:無料
4か月目以降:1回3,000円

公式サイトへ

まとめ

オルソケラトロジーの仕組みや子供がオルソケラトロジーを利用するメリット・デメリットなど、お分かりいただけでしょうか?
オルソケラトロジーはテストレンズを使用することができるので、オルソケラトロジーの利用を始めたときのシミュレーションがしっかりとできます。
また、コンタクトレンズを清潔に保たなければ感染症の危険性がありますが、きちんとルールを守り使用すれば、その可能性は格段に低くなるでしょう。
必要な条件をクリアできるのであれば、オルソケラトロジーは子供にもおすすめの視力回復法です。 まずは病院を受診し、医師と相談したうえで適応検査を受けてみましょう。

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